綿毛のモビール

ふわり、ふわりと揺れながら風に乗るたんぽぽの綿毛。
空を漂い、たどり着いたその先で、新たな命を育んでいく。
誰もが記憶の中に持っている幼少期の記憶や自然の原風景を、
毎日の暮らしの中に呼び込んで、みなさんの心に癒しと希望を届けたい—。
そんな想いから、nidoの初めてのインテリア商品「綿毛のモビール」が誕生しました。

鳥取の素材でつくる

【nido】が今回取り組んだ素材は、地元鳥取県の工芸品である【因州和紙】。
約1300年の長い歴史を持ち、和紙としては日本で初めて「経済産業大臣指定伝統的工芸品」に指定された因州和紙は、浅草寺雷門の大提灯に使用されていることでも有名です。
その紙漉きの風景は「日本の音風景100選(環境庁)」にも選ばれていますが、主な生産地である青谷地区では、最盛期に1300を数えた生産業者も現在は20軒から30軒ほどが残るのみとなっています。

植物たちのしなやかな強さを活かして、人の手で根気強く長い時間と手間ひまをかけて作り上げられた、美しい和紙。
この宝物のように貴重な文化が、現代の生活様式の変化の中で居場所を無くし、消えかかっているのをただ眺めていることはできないと感じていました。

いまこんな時代だからこそ、私たちが「和紙」から受け取るものはきっと多いはずです。
長い歴史に積み重ねられた先人の手仕事からは、自然への畏怖や、真摯な姿勢、丁寧で無駄のないものづくりへのこだわり、季節と共に暮らすスローライフスタイルや、人々のそばにいつもあった綺麗な水と空気、山や森、そういったものたちをありありと感じ取れる気がします。

障子や壁紙、照明器具など固定されて使うことの多い和紙ですが、あえて空間に“浮遊”させることで、和紙の優しさや軽やかさを最大限に活かしました。
透明なテグスで吊った「モビール」は、風が吹くたびゆらゆらと風に乗り、空を飛ぶ綿毛さながらの動きで空中に漂います。

そしてたんぽぽの綿毛の“白い色”は、再生や循環を象徴する色。
それは、和紙のイメージとも重なります。
ゆっくり、ゆっくりと風に漂うスローな動きが、日々の暮らしのかけがえのない一瞬を気付かせてくれるプロダクトです。

手仕事のあたたかさ

たんぽぽの綿毛にとって、「命」を象徴する【種】。
モチーフの中で最も密度の高い核となる部分にはどうしても想いを込めたい、という願いから、
特別に、鳥取市在住の木地師・藤本かおりさんに木製の種を制作して頂いています。

鳥取市河原町にある「工房このか」を主宰する藤本さん。
ろくろを回し、「挽きもの」と呼ばれる伝統的な技法で木工製品を制作されています。

小さな種の形をひとつひとつ丹精込めて削り出す細やかな作業に、女性ならではの感性を感じます。
今では職人さんの数も少なくなった「木地師」というお仕事。
手間のかかる工程の中に、藤本さんの木への尊敬と愛情が感じられます。

そして、和紙、木工など、作り手さんの愛情が込もった素材たちを束ねて綿毛の形に組み立てる作業は、
鳥取市の障がい者就労継続支援施設「フルール合同会社」のみなさまと共同で行っています。

素材の魅力に触れながら、
そして、買い求めてくださった方々のゆったりとした豊かな時間を想像しながら、
綿毛の形を作り上げていきます。

助け合うこと、分かち合うこと、みんなと一緒に作ること。
社会と繋がるもの作りの形を目指しています。

私たちが届けるもの

ふと爽やかな風が吹けば、窓際で3つの綿毛がふんわりと揺れていて、
陽の光に透けた白い和紙が、ゆっくりと空間を漂っている。
それは空気のように日常生活に溶け込んでいるけれど、
いつの間にか無意識のうちに、
風や光、外に広がる自然を、私たちに感じさせてくれている。

私たちnidoが鳥取で商品を作る意味は、豊かな自然とそこから生まれた文化、人の営みを、次の誰かにつなぐことなのだと感じています。
素晴らしいつくり手さんたちと一緒に作り上げたこの綿毛のモビールが、私たちの手から、お客様のお手元へ。
飛んでゆく先々で、また新たなストーリーが生まれてゆくようにと願いながら、私たちは心を込めて創作しています。